04

6:26 - 7:19

成果ベースのエンタープライズGTMとACVのシグナル

この時点から動画を見る

この章の要点

前の章では、技術的に複雑なプラットフォームを、顧客の業務に合わせて実装する必要性を見ました。この章では、その仕組みがどのように販売方法(go-to-market、GTM)になるかを考えます。

話者の説明では、プラットフォームと顧客向けエンジニアを組み合わせるモデルが、Palantirを世界のFortune 500企業へ広げる道になりました。ここでいうFortune 500は、売上規模の大きい企業を並べた企業ランキングです。顧客は、単にソフトウェアの利用権を買うのではありません。自社のデータや業務に合わせて、実際に使える解決策を導入し、事業上の成果を得ようとします。

製品を売るのではなく、成果まで届ける

通常のSaaS販売では、会社が製品を提供し、顧客が自分で設定して使い始めます。別の方法として、会社が人の作業をサービスとして提供することもあります。たとえば、顧客のために個別のシステムを作る受託開発です。

FDEのモデルは、この二つの中間にあります。共通の技術基盤であるプラットフォームは、複数の顧客に再利用できます。一方、顧客向けエンジニアは、顧客の業務を理解し、その基盤の上に顧客ごとの解決策を作ります。したがって、販売の対象は「プラットフォーム」だけでも、「エンジニアの作業時間」だけでもありません。顧客が必要としている業務上の成果を、その二つを使って実現することです。

ここでいう成果は、たとえばデータをきれいに整理すること自体ではありません。整理したデータを使って、意思決定を速くしたり、業務の流れを改善したりすることです。顧客が高い技術力を持っていない場合、プラットフォームを渡すだけでは、顧客はその成果まで到達できないかもしれません。FDEは、プラットフォームの機能と顧客の現場との間にある距離を埋めます。

これは、販売後の単なる導入支援という意味ではありません。導入の仕事が、顧客の成果を作る中心的な活動になります。そのため、顧客の問題を見つけ、解決策を作り、成果を届ける一連の流れそのものが、エンタープライズ向けGTMになります。

ACVは何を示すのか

話者は、このモデルが商業的に機能したことを示す材料として、**平均契約価値(Average Contract Value、ACV)**を取り上げます。ACVは、契約1件あたりの平均的な価値です。契約を何件結んだかではなく、1件の契約が平均してどれほど大きいかを見る指標です。

ACVは、次の数字とは別のものです。

  • 売上:一定期間に会社が得た収入の合計です。
  • 企業価値:投資家などが会社全体をどれほどの価値と見るかです。
  • 従業員数:会社で働く人の人数です。
  • 契約総数:結んだ契約の件数です。

たとえば、契約が少なくても1件ごとの価値が大きければ、ACVは高くなります。逆に、契約が多くても1件ごとの価値が小さければ、ACVは低いことがあります。ACVは、企業の規模や利益を一つの数字で表すものではありません。顧客1社に対して、どれほど大きな商談を成立させているかを見るための信号です。

話者が示した企業比較の読み方

話者は、公開されているSaaS企業の比較として、平均契約価値がPalantir、ServiceNow、Workdayの順に高いという趣旨を述べました。さらに、Palantirの企業価値と、比較的少ない従業員数にも触れています。

ただし、これはこの講演で話者が示した比較です。話者自身も「最後に確認した時点では」「そう言いたい」といった不確かさを残しており、数字の通貨、単位、時点、出典はこの説明だけでは確認できません。したがって、ここでの数値や順位を、検証済みの統計として扱ってはいけません。

それでも、この比較には講演上の役割があります。話者は、PalantirのFDEモデルが、単に顧客ごとに人を送り込む高コストなサービスではないと示そうとしています。大企業との契約で大きな成果を扱いながら、共有プラットフォームを使うことで、会社全体の規模に対して高い契約価値を作れる。その可能性を、ACVや従業員数という商業上の信号で説明しています。

ACVが高いことは、原因の証明ではない

ここで注意が必要です。PalantirのACVが高いという主張から、すぐに「FDEが企業価値を生んだ」「FDEが成長や効率を直接引き起こした」と結論づけることはできません。高いACVには、製品の性質、顧客の規模、契約条件、販売時期など、別の要因も関係する可能性があります。

この章でのACVは、FDEの因果関係を証明するものではありません。話者が提案するビジネスモデルに、商業的な整合性があるかを考えるための手がかりです。

まとめ:成果が販売の中心になる条件

技術的に複雑で、顧客ごとの構築が必要な製品では、製品を売って顧客に実装を任せるだけでは不十分なことがあります。顧客向けエンジニアがプラットフォーム上で解決策を作れば、会社は技術基盤を再利用しながら、顧客が求める成果を販売できます。これが、この講演でいう成果を軸にしたエンタープライズ向けGTMです。

ただし、成果を約束することは、無制限の個別開発を約束することではありません。共有プラットフォームがあるからこそ、このモデルは受託開発会社とは異なります。次の章では、その再利用可能な基盤が、どのようにFDEの拡大を支えるのかを見ます。

出典:Kevin Bai「Forward Deployed Engineering 101」386秒からの説明

100% スペースキーとドラッグで移動 | Ctrl/Cmdとホイールで拡大縮小