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分布のずれがカスタムハーネスを必要にする場合

この節では、既製のハーネス(off-the-shelf harness)をいつカスタマイズするべきかを考えます。話者の考えでは、仕事がモデルの学習時の分布から遠くなるほど、カスタムハーネスを使う理由が強くなります。ただし、すべてを作り直すという意味ではありません。モデルに合う部分は残し、外側の仕事の流れを調整します。

「分布の内側」と「分布の外側」

ここでいう分布(distribution)とは、モデルが学習などを通して、どのような入力、作業、結果の組み合わせに慣れているかという範囲です。ある仕事がその範囲に近ければ、in distribution(分布の内側)です。範囲から遠ければ、out of distribution(分布の外側)です。これは、仕事を二つに完全に分ける正式な境界ではありません。連続したずれとして考えます。

法務AIでは、外側と内側が同時に存在する

話者は法務AI(legal AI)を例に挙げます。法務の仕事全体は、モデルにとって分布の外側にあるかもしれません。一方で、その仕事の中にある「ファイルを編集する」という小さな操作は、モデルにとって分布の内側にある可能性があります。つまり、外側の大きな目的と、内側の一つの操作は、同じ分布にあるとは限りません。

例:入れ子になった仕事

  • 外側の仕事:法務AIが、法律文書を調べ、重要な点を整理し、結果を決まった形式のファイルにまとめます。ここでは、法務という領域に合う順序や判断が必要です。
  • 内側の操作:エージェントが、そのファイルを開き、指定された場所を書き換えて保存します。このファイル編集の実装は、使っているモデルに合うものを選べます。

この場合、話者が勧めるのは、法務の流れを管理する外側のハーネスをカスタマイズすることです。法務文書をどう集めるか、どの段階で確認するか、どの形式で結果を出すかを、用途に合わせて組み立てます。しかし、ファイル編集まで一般的な処理に置き換える必要はありません。モデルが得意とするファイル編集の動きは、残しておく方がよい場合があります。

モデルプロファイルで内側の実装を選ぶ

話者によれば、OpenAIのモデルとClaudeのモデルは、ファイルの編集方法が異なります。ここで重要なのは、どちらの方法が常に優れているかを決めることではありません。使うモデルに合わせて、適切な小さな処理を選ぶことです。

モデルプロファイル(model profile)は、その選択をするための仕組みです。現在のモデルを確認し、そのモデル向けの「ファイル編集」実装へルーティングします。このようにすると、法務AIの外側の流れは共通にしながら、モデルに近い内側の操作だけを交換できます。

カスタマイズは段階で考える

分布のずれが大きくなると、ハーネスを調整する必要性も大きくなります。これは、既製か完全自作かを一度に選ぶ二択ではありません。話者の考え方を整理すると、次のような段階になります。

  1. 仕事がモデルの得意な範囲に近いなら、既製のハーネスから始めます。
  2. 仕事を特定の用途に絞るなら、必要な場所にゲート、確認、要約、ツール処理を加えます。
  3. 仕事の流れがさらに専門的になり、順序を明確に管理したいなら、外側にドメイン特化のハーネスを作ります。その中でも、モデルに合う操作はモデルプロファイルで使い分けます。

この段階は、話者が示した定量的な判定表ではありません。正式な「分布の内側・外側」のしきい値も、話の中では示されていません。大切なのは、一般的なハーネスを出発点にし、必要な部分だけを少しずつ専門化することです。カスタム化は、エージェント全体を書き直すこととは限りません。ミドルウェアの追加や、モデル固有の小さな実装の交換だけで済む場合もあります。

話の主張と不確実な点

ここで説明した分布、法務AI、モデルプロファイルについての説明は、講演での話者の主張を整理したものです。話者は、ファイル編集の能力と強化学習(reinforcement learning)にも広く触れていますが、ここでは各モデルの訓練の歴史を検証していません。また、講演中に出てくる既製製品の名前には、文字起こしの不確かな箇所があります。その名前を正しく直すことより、モデルに近い操作と、用途に合わせる外側の流れを分けて考えることが重要です。

まとめ

モデルが見慣れている操作は、そのモデルに合う実装として活用します。モデルが見慣れていない大きな領域の仕事は、外側のハーネスで調整します。分布のずれが大きいほど、ゲートや確認を増やし、必要なら専門的な流れを組み立てます。この考え方なら、モデルを固定せずに、ハーネスの制御とモデル固有の強みを両方保てます。

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