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次のボトルネックは顧客を深く理解すること

この章の中心は、AIの仕事が「作業を実行すること」から「特定の会社の仕事を理解すること」へ移る、という話者の見方です。講演では、顧客の中に深く入り込む仕事を、どうすれば人員を増やし続けずに広げられるかが問題として示されます。

ここでいう Forward-deployed engineering(フォワード・デプロイド・エンジニアリング、FDE) は、顧客の組織に入り、そこで実際に行われている業務やプロセスを深く理解し、その顧客に合う技術的な解決策を作って導入する役割です。つまり、完成した製品を遠くから渡すだけではありません。顧客の現場を知ること自体が、この役割の重要な仕事です。

このような個別対応には、明らかな利点があります。顧客の会社だけにあるルールや進め方を見つけられるからです。一方で、顧客ごとに深く関わるほど、一社あたりに必要な人の時間も増えます。同じ方法で顧客数を増やすと、仕事の量に合わせてFDEの人数も増やすように見えます。話者は、この「顧客を深く理解したい」という価値と、「人員を指数関数的に増やしたくない」という制約を、講演の出発点にしています。

話者の主張では、AIは単発の補助だけでなく、仕事を最初から最後まで実行できる段階に近づいています。たとえば、入力を受け取り、必要な情報を調べ、処理を行い、結果を所定の場所に届ける、という一続きの仕事です。話者は、現在のモデルと実行環境なら、このような実行をほぼ完璧にできると述べます。また、AIの知能そのものは、もはや主な制約ではないと考えています。ただし、これはすべての仕事についての測定結果ではありません。実行上の課題が完全に消えた、という意味でもありません。

この実行には、モデルだけではなく周辺の仕組みも関係します。モデルは入力を解釈し、次に何をするかを決めます。ハーネスは、そのモデルに仕事を進めさせるための実行環境です。そこにブラウザ操作やAPI呼び出しのツール、MCP(Model Context Protocol)などの接続が加わります。話者はこれらを組み合わせることで、AIが一つの作業を最後まで進められると説明します。講演では、これらの具体的な実装方法や安全策までは示されていません。

例(理解のための一般化): AIに「営業の仕事を進めてください」と頼むだけでは、顧客の会社で正しい結果になるとは限りません。一般的な実行なら、メールから情報を取り出し、CRMに登録し、次の連絡を作ることはできます。しかし、ある会社では担当者の確認を最優先し、別の会社では契約規模を最優先するかもしれません。誰が確認するのか、例外をどこまで許すのか、社内でどの名前を使うのかも会社ごとに違います。この違いを知らなければ、AIは作業を実行できても、その会社の仕事を正しく理解したことにはなりません。

ここで、ボトルネックが移ります。モデルに道具を与えて実行能力を高めるだけなら、共通の仕組みとして広げられます。しかし、顧客固有の判断、担当者、例外、優先順位は、単純な一回のプロンプトやAPI入力にまとめにくい情報です。従業員が日々の仕事の中で使っている会社固有の文脈を見つけるには、FDEが現場に入り、業務が実際にどう動くかを理解する必要があります。したがって話者は、「AIに何をさせるか」より前に、「その会社がどのように仕事をしているかを知ること」が次の制約になると論じます。

図1 「The Next Bottleneck」のタイトルスライド。 画面には「The Next Bottleneck」と「AI Forward Deployed Engineering」が表示され、上部にはVarick Agentsの名前も見えます。このスライドは、講演がFDEにおける次の制約を扱うという全体の枠組みを示しています。該当箇所は動画の00:57です。

この問題意識は、単なる題名や宣伝文句ではありません。顧客ごとの理解を人だけで増やそうとすれば、深い仕事ほど人員の制約を受けます。後の議論では、FDEの仕事を支援するエージェントと、顧客の既存システムの上でエージェントを動かすプラットフォームが、この制約への対応として提案されます。目的は、人との対話や顧客理解をなくすことではなく、深い理解に必要な人の時間を、実行可能な範囲で広げることです。

注意: 冒頭の話者名と会社名は、文字起こしの中で表記が一定していません。そのため、ここで紹介した「実行がほぼ完璧」「知能が主な制約ではない」という内容は、独立して確認された事実ではなく、話者の立場として扱います。

要点は、AIが仕事を実行できるようになるほど、会社ごとの業務を理解し、AIに合う形へ変える仕事の重要性が増すということです。FDEはその顧客固有の文脈を見つける役割を担います。そして、顧客数を増やすときの本当の課題は、作業を一回実行する能力だけでなく、顧客を十分に深く理解する能力をどう広げるかにあります。

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