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部門全体の再設計でより大きな価値を生む

実行から仕事の設計へ、ボトルネックが移る

話者の振り返りでは、2024年ごろは「AIに仕事を実行させること」が大きな制約でした。モデルやツールが、決められた作業を最後まで進められるかどうかが問題だったのです。現在は、話者が別の制約を強調しています。それは、AIを前提にして、仕事そのものをどう組み立て直すかという問題です。

話者は、知識労働の実行やモデルの能力は大きく進み、知能そのものが主な制約ではなくなった、と説明します。ただし、これは話者による時代の整理です。すべての仕事の実行が解決した、という独立した測定結果ではありません。ここでいう「ボトルネック」は、全体の進み方を最も強く遅くしている部分を指します。

AIを前提に仕事を設計する

「AIを使う」と決めてモデルを選ぶだけでは、仕事の設計は変わりません。設計するとは、仕事全体を見て、どの手順を自動化し、どこで人が確認し、どの判断を人に残すかを決めることです。つまり、AIを既存の一つの作業に追加するのではなく、部門の流れがAIを含む形でうまくつながるように考えます。

この考え方は、前の章で扱った発見作業とつながっています。まずFDE(Forward-Deployed Engineer)が顧客の部門に入り、実際の業務と部門間の依存関係を理解します。その情報を使って、部門全体の仕事を組み直します。その後で、既存のシステムの上にエージェントを実装します。

一つの作業を自動化するか、部門全体を変えるか

話者は、特定の一作業だけを改善する「点の解決策(point solution)」と、部門全体を変える取り組みを対比します。点の解決策は始めやすい一方で、その作業の前後にある引き継ぎや判断を変えないことがあります。その場合、一部分は速くなっても、別の場所に手作業や待ち時間が残ります。

話者の例では、営業の見込み客開拓(prospecting)だけを自動化する方法があります。また、経理の買掛金(AP)にある一つの作業だけを自動化する方法もあります。これらは便利な改善ですが、営業部門や経理部門の他の作業との関係までは、必ずしも扱いません。

部門全体の変革では、複数の作業を別々に見るのではなく、互いにつながった一つの流れとして見ます。たとえば、入力、承認、照合、例外処理、次の担当者への引き継ぎをまとめて調べます。そして、各部分について、AIに任せるか、人が途中で確認するか、人だけで続けるかを割り当てます。この範囲の広い設計が、話者のいう「AIを中心に仕事を設計する」ことです。

価値を三つの種類に分けて考える

話者は、部門全体の変革が生む価値を、主に次の三つに分けています。

  • 売上向上(revenue uplift):より多くの売上につながることです。
  • コスト削減(cost savings):同じ仕事に必要な時間や費用を減らすことです。
  • リスク低減(risk mitigation):誤り、遅れ、規則違反などの可能性を小さくすることです。

ROI(投資対効果)について、話者は顧客の結果として、局所的な解決策では5〜10%程度、部門全体の変革では25%、50%、75%といった数字を報告しています。これらは話者が示した顧客成果の範囲です。基準となる状態、計算方法、測定期間などは説明されていないため、すべての会社に当てはまる法則として読むことはできません。

なぜ広い範囲を見ると価値が大きくなり得るのか

補足として考えると、部門内の作業は互いに依存しています。一つの作業だけを速くしても、次の担当者が同じ情報を手で確認していれば、部門全体の時間はあまり減らないかもしれません。反対に、関連する手順と引き継ぎをまとめて見直せば、重複作業を減らし、人の確認を価値やリスクの高い場所に置けます。ただし、実際にどれだけ価値が出るかは、会社の業務、データ、リスク、導入方法によって変わります。広い変革が必ず高いROIになる、という意味ではありません。

事業上の問いから、エージェントの実装へ

この章のポイントは、モデルを選ぶことより先に、部門全体の仕事をどう再設計するかを決めることです。局所的な自動化は出発点になりますが、より大きな価値を目指すなら、部門内の依存関係と三つの価値の種類を一緒に考える必要があります。次の章では、この事業上の考え方を、FDEを支援する三段階のエージェントという技術的な設計へつなげます。

まとめ

  • 話者の整理では、AIの実行能力が進んだことで、主な制約は仕事の設計へ移りました。
  • FDEは、部門全体の流れを見て、自動化と人の役割を組み直します。
  • prospectingやAPの一作業だけを変える方法と、部門全体を変える方法は異なります。
  • 価値は売上向上、コスト削減、リスク低減の三つの面から評価できます。
  • 5〜10%、25%、50%、75%という数字は、方法の説明がない話者の報告値です。
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