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実行だけでは足りない理由

話者は、AIを使って仕事を最後まで実行できる人が、以前より大きく増えたと説明します。そして、AI導入で次に難しくなるのは、単に作業を実行することではなく、それぞれの会社が実際にどのように仕事をしているかを理解することだと述べます。

「端から端まで」の仕事とは

ここでいう端から端まで(end-to-end)の仕事とは、途中の一部分だけをAIに手伝わせることではありません。目的を決め、必要な情報を集め、複数の手順を進め、結果を確認するところまで、一つの仕事の流れ全体を実行することです。

話者は会場に、以前からAIでこのような仕事全体を実行していた人がいるかを尋ねます。最初に手を挙げた人は少なく、今では多くの人が手を挙げる、という対比を示します。これは会場の経験が変わったことを示す例であり、管理された調査の数字ではありません。

例えば、文章の一段落を直してもらうのは、一部分への支援です。一方、顧客への提案を準備するなら、資料を調べ、内容を組み立て、必要なファイルを作り、最後に提出できる形にするところまでが端から端までの流れです。後者では、各手順がつながっているため、途中の一手だけが便利になっても、仕事全体が変わったとは限りません。

ボトルネックは実行から理解へ移る

話者の見方では、モデルの知能だけでなく、実行ハーネス(execution harness)やブラウザー操作、API、MCPなどの道具が進歩しました。モデルに仕事をさせるための接続や操作の仕組みが増えたことで、AIは知識を答えるだけでなく、複数の手順を動かせるようになっています。ただし、この講演はそれぞれの仕組みの実装方法までは説明していません。

ここでは、三つの層を分けて考える必要があります。モデルは判断や生成を行います。ハーネスと各種ツールは、モデルが外部の画面やシステムを操作できるようにします。そして業務設計は、会社の中で誰が、どの順番で、どの条件で仕事を進めるかを決めます。モデルと道具を渡すだけでは、三つ目の層は自動では変わりません。

話者は、実行そのものは「ほぼ完璧」に近いところまで可能になり、知能はもはや主な制約ではない、と強く主張します。これは話者の立場として紹介されている主張です。すべての仕事や環境について、同じ性能が測定で確認されたという意味ではありません。重要なのは、話者が制約の中心を別の場所に置いていることです。

AIを足すだけでなく、業務を組み替える

Cursor、Claude Code、Codex、Factoryのようなツールを導入するだけでは、会社の業務はAI中心になりません。ツールは個人の作業を速くするかもしれませんが、役割分担、承認、情報の受け渡し、例外への対応が以前のままなら、組織全体の流れは変わらないからです。

話者が提案するのは、人間中心の業務からAI中心の業務への移行です。これは、すぐに人間がいなくなるという意味ではありません。仕事の流れを先に見直し、AIが担当する部分、人間が確認する部分、常に人間が担当する部分を決める、という将来の運用モデルです。

顧客ごとの文脈は簡単に取り出せない

補足例:同じ営業でも会社によって違う

医療向けの営業とSaaS企業の営業は、どちらも「営業」と呼べます。しかし、顧客、社内の手順、必要な情報、関係者の判断などは異なる可能性があります。この対比は、同じ職種名だけでは実際の業務を説明できないことを示す補足例です。話者は、この二つの営業の違いをすべて列挙しているわけではありません。

会社の文脈は、社員やチームの経験の中に隠れていることがあります。「この顧客ではこの順番にする」「この条件なら別の担当者に確認する」といった知識です。このような暗黙の実務を、そのまま簡単なモデルやAPI呼び出しの入力にするのは難しいです。文書に書かれていない判断や、部署をまたぐ受け渡しも含まれるからです。

FDEが担う二つの仕事

そこで話者は、FDE(Forward-Deployed Engineer、顧客密着型エンジニア)に重要な役割を与えます。FDEは顧客の組織に深く入り、まず現在の業務が実際にどう動いているかを理解します。そのうえで、AIを中心にした明日の業務を考え直します。つまり、FDEは現在の地図を作る仕事と、未来の地図を設計する仕事の両方を行います。

この二つの仕事が、最初に示された人員の問題につながります。顧客ごとの業務を深く理解するほど、顧客ごとに多くの人手が必要に見えます。AIの実行能力が高まっても、文脈の発見と業務の再設計を人間だけで行えば、顧客数に比例してチームを増やすことになります。だからこそ、話者は後の章で、FDEの仕事を支援するエージェントとプラットフォームを提案します。人間をすぐに置き換えるのではなく、人間が顧客を理解し、業務を変えるための力を広げるという考えです。

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