05

7:06 - 8:30

基幹システムの上にエージェントを置く

この章では、FDE(forward-deployed engineer)が担う三つ目の仕事を見ます。FDEは、顧客の組織に深く入り、実際の業務を理解して技術的な変更を進める役割です。話者の説明では、業務を把握し、AIを中心にワークフローを再設計した次に、エージェントを顧客の既存システムへ導入します。

三つ目の仕事は、既存の環境に導入することです

ここでいう基幹システム(system of record)とは、会社が日々の仕事で使い続け、業務上の記録を持っている既存の企業システムです。この章で重要なのは、新しいエージェントだけを用意することではありません。エージェントが、顧客の仕事を支えているそのシステムと一緒に動くことです。

話者は、企業で使われているシステムの例として、次の名前を挙げています。

  • NetSuite(企業で使われるシステムの例)
  • Dynamics
  • SAP
  • Salesforce

企業がこうしたシステムを使っているのは、単に今すぐ別の製品を選べるからではありません。長いあいだの導入や運用の履歴があり、データや業務のやり方も結びついています。そこには移行(migration)の費用、これまでの投資という埋没費用(sunk cost)、そして組織が大きく変わることへの抵抗があります。

話者は、この制約を示すために顧客の発言を紹介します。その顧客は、NetSuiteを5年間使っていて、別のシステムへ移るには500万ドルかかる、と述べています。これはその顧客についての引用です。企業一般の移行費用や、必ず5年で移行を検討するという意味ではありません。

「上に置く」とは、置き換えずに重ねることです

そのため、話者が提案するのは、NetSuiteやSalesforceを捨てて新しいシステムへ移すことではありません。既存システムの上にエージェントを構築し、会社がすでに使っている環境の中で仕事をさせます。これは移行ではなく、既存の基幹システムとの連携と、その上への機能追加です。

例:Salesforceを残してエージェントを加える

たとえば、顧客の営業記録がSalesforceにあるとします。エージェントを導入するために、最初からSalesforceを別製品に置き換える必要はありません。既存の記録と業務の流れを前提にして、営業の作業を助けるエージェントをその環境に加える、という考え方です。これは仕組みの理解を助ける例であり、話者が特定のSalesforce導入方法を説明したものではありません。

この違いは重要です。単独のAI製品が高度でも、顧客の仕事や記録から切り離されていれば、会社の実際の業務には入りにくくなります。反対に、既存システムと結びつけば、前の章で把握したワークフローや依存関係に沿ってエージェントを使えます。つまり、AIの性能だけでなく、顧客がすでに仕事をしている場所に接続できるかどうかが導入を左右します。

プラットフォームがエージェントを管理します

話者は、このためのプラットフォームをVarick OSと呼んで説明しています。話者の主張によれば、このプラットフォームは、顧客の環境にエージェントを展開する土台になります。そこで挙げられている役割は、次の四つです。

  • エージェントを立ち上げること(spin-up)
  • エージェントの動作を監視すること(monitoring)
  • 利用や運用のルールを管理すること(governance)
  • エージェントが期待どおり働くかを確かめること(evaluation)

ここで、監視がどのデータを見て、ガバナンスがどんな制御を行い、評価がどんな指標を使うかまでは、話者は説明していません。したがって、Varick OSを特定の構成や安全機構を持つ製品として細かく想像するべきではありません。確認できるのは、エージェントの立ち上げから監視、ガバナンス、評価までを支えるプラットフォームを目指している、という範囲です。

このプラットフォームの考え方は、FDEの前の二つの仕事とつながっています。まず、FDEは顧客の部門で、人、判断、引き継ぎ、例外を含む実際のワークフローを調べます。次に、壊れた流れへAIを足すのではなく、AIを中心に各ステップを設計し直します。そのうえで、エージェントを顧客が本当に使っている基幹システムの上へ置きます。実際の業務から離れた場所でエージェントを作ると、最初の調査や再設計の成果を導入に生かしにくくなります。

話者は、企業こそAIを最も必要としている、と結論づけます。これは市場全体を測った数字ではありません。大きな企業ほど、長い移行の歴史や複雑な業務を抱えていて、既存の環境を簡単には動かせないからこそ、そこで働くAIの価値が大きい、という話者の考えです。

注意点

文字起こしでは、会社名やプラットフォーム名の表記が一定していません。また、企業が大きすぎて「move up」できないという箇所も完全には確認できません。ここでのVarick OSという名前、導入の説明、そして500万ドル・5年という数字は、計画に示された話者の説明と顧客の引用として扱います。

この章の因果関係は明確です。企業の業務は、既存の基幹システムと、その上に積み重なった記録や習慣に結びついています。だから、エージェントを広げるには、すべてを移行するのではなく、その環境の上で動かす必要があります。FDEが業務を理解して再設計し、プラットフォームがエージェントの展開、監視、ガバナンス、評価を支える、というのが話者の提案です。

100% スペースキーとドラッグで移動 | Ctrl/Cmdとホイールで拡大縮小