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業務を変える前に実際のワークフローを把握する

FDEの最初の仕事は、実際の仕事の流れを知ることです

ここでいう顧客密着型エンジニアリング(forward-deployed engineering、FDE)は、顧客の組織と業務の中に深く入る技術的な仕事です。FDEは、外から一般的なAIツールを渡すだけではありません。顧客の社員が、実際には誰と何を確認し、どこで判断し、問題が起きたときに誰へ渡しているかを調べます。

大きな企業全体ではなく、まず一つの部門を見る

話し手によると、FDEはまず顧客の企業に入り、調査する範囲を一つの部門まで狭めます。企業全体を一度に理解しようとすると、業務の関係が広がりすぎるからです。その部門のプロセスリード、つまり各業務の流れをよく知る担当者に話を聞きます。

たとえば、話の中では財務部門について、次のような仕事が調査対象として挙げられています。

  • APの処理
  • ARの処理
  • カード取引の照合
  • 銀行関連の処理
  • 請求処理
  • FP&A

FDEが聞くのは、「通常はどのように進みますか」だけではありません。「通常の手順がうまくいかなかったら、実際には何をしますか」とも聞きます。つまり、書類に書かれた手順と、社員が現場で行う手順の両方を調べるのです。

正常経路だけでは、会社の業務はわかりません

業務文書には、理想的な正常経路(golden path)が書かれていることがあります。そこには、仕事が問題なく進む場合の手順と、いくつかの例外だけが載っているかもしれません。しかし、現場では例外が重なります。担当者が変わったり、必要な情報が足りなかったり、別の部署の返事を待ったりします。このような細かい対応は、正式な文書から抜けやすい部分です。

話し手の例では、APの通常の流れが失敗したあと、SarahからChrisへ仕事が渡されます。二人の間で、発注書と請求書を照合する作業に4日かかっていました。

この例で重要なのは、4日という時間だけではありません。文書上は一つの処理に見えても、実際には「この問題を誰が引き受けるのか」が決まっていなかった可能性があります。SarahからChrisへの引き継ぎも、単純な担当者変更ではなく、部門や役割の境界をまたぐ依存関係を示しています。こうした見えにくい所有者と引き継ぎを知らなければ、AIをどこに置いても、実際の仕事の流れには合わないかもしれません。

自動化の設計は、発見のあとに行います

この調査でFDEが見つけるのは、会社ごとの独自のやり方です。同じ名前の業務でも、誰が承認するか、どの部署が情報を持つか、失敗時にどの担当者へ渡すかは会社によって異なります。FDEは、通常の流れだけでなく、こうした例外と部門間の依存関係も含めて、後でワークフローやグラフとして表せる形に整理します。

したがって、この段階の目的は、すぐに新しいエージェントを作ることではありません。まず現場に入り、複数のプロセスリードから別々の見方を集めます。そのうえで、正常経路、例外、判断、引き継ぎ、待ち時間を一つの業務像として理解します。次の段階で初めて、その理解を使ってAI中心のワークフローを設計できます。

補足:この章の範囲

AP、AR、FP&Aは、話の中で使われた財務業務のラベルです。ここでは、その正式な展開や会社ごとの定義を推測しません。SarahとChrisの話も、話し手が顧客との調査で示した例であり、独立して検証された事例として扱うものではありません。重要なのは、企業の実際の業務には、文書にない担当者間の引き継ぎと例外がある、という発見の型です。

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